2週間以上にわたって
下痢が続く場合は
深刻な疾患の可能性があります
食べ物は、食道、胃、十二指腸、小腸と運ばれながら消化され、大腸で水分を吸収されて固まって直腸の直前のS状結腸に到達します。便に含まれる水分が多いと、腸壁が刺激を受けて腸の蠕動運動が活発になって下痢を起こし、水分が多く含まれた軟便や水様便が排泄されます。
下痢は、急に起こる急性下痢と、2週間以上にわたって下痢が継続する慢性下痢に分類されます。いずれのタイプも、血便や嘔吐、発熱なども起きている場合は、重篤な疾患が原因となっていることがあるため早めに当院までご相談ください。
下痢に伴って嘔吐・血便・
発熱が起こる場合は
早めに受診しましょう
急性下痢の状態で、血便や嘔吐、発熱なども起きている場合、ウイルスや細菌などの感染による腸炎の恐れがあります。嘔吐により水分をしっかりと摂取できない場合は、脱水症状に至る危険性があります。また、感染している方が自己判断で市販の下痢止めを飲んでしまうと、病原体や病原体が放出する毒素を体内に溜め込んでしまい、より病状が悪くなる場合があります。
さらには、髄膜炎や敗血症など重篤な合併症を発症する可能性もあります。長期間にわたって下痢が続いており、加えて血便や嘔吐、発熱症状を示す場合、難病指定を受けているクローン病や潰瘍性大腸炎かもしれません。これらの疾患は昨今発症数が増えてきており、専門的な検査を行い、適切な治療を行う必要がありです。
急性下痢であれ慢性下痢であれ、血便や嘔吐、発熱も起きている方は、早めに当院までご相談ください。
下痢の症状と種類
下痢になる原因に応じて以下の3つのタイプに大別されます。1つ目の原因は腸から出る水分や分泌物が過剰になる、2つ目の原因は腸が十分に水分を吸収できてない、3つ目の原因は腸の蠕動運動が過度になり水分が十分に吸収できないことです。
分泌性下痢
分泌性下痢は、腸に起こった炎症などにより浸出液の量があまりにも多い場合と、腸管から過剰な量の分泌液が放出され便中の水分が多くなり過ぎる場合があります。
原因として、お薬の副作用、食中毒などの細菌感染、食物アレルギーなどが挙げられます。
浸透圧系下痢
腸内に、水分を過剰に吸収してしまう物質や、浸透圧を上げる物質や食物が運ばれてくると、腸管が正常に水分を吸収できなくなり下痢が起こります。代表的な物質には、キシリトールなどの添加物やソルビトールなどの人工甘味料が挙げられます。また、マグネシウムが含まれている下剤はこの仕組みを応用しています。
運動亢進性下痢
大腸の蠕動運動が過剰になり、便が結腸内をあまりに早く進むと、水分が吸収できずに下痢が起こります。腹痛も起こることが多いです。原因には、暴飲暴食、自律神経の失調、内分泌の異常などが挙げられます。
下痢の原因
日常的な原因で生じる下痢
下痢以外の症状がない場合、原因は日常生活の問題が疑われます。特に、ストレス、冷え、暴飲暴食などが原因となることが多いです。
刺激が強い食品や暴飲暴食
香辛料やアルコールの過剰摂取などにより腸に刺激が加わると、蠕動運動が活発になり下痢が起こります。また、腸の消化機能が追いつかないほど食べ過ぎてしまい、下痢が起きる場合もあります。他にも、冷たい物を過剰に摂取するとお腹が冷えて下痢が発生します。
冷え
体が冷えてしまうと血流が悪くなり、消化機能が弱くなって下痢が起こります。冷えと聞くと寒い冬季に起こるイメージがありますが、夏季でも冷たい物の過剰摂取や冷房などにより起こりやすいです。
ストレス
消化機能は自律神経によって制御されており。ストレスがかかると自律神経が失調し、蠕動運動が亢進して下痢が起こります。
過敏性腸症候群の下痢は、このような機能的な原因により生じると言われています。
下痢の原因となる主な疾患
長期間にわたって下痢が続く場合、消化器など何らかの疾患が原因になっていることが多いため注意する必要があります。以下は下痢の原因となる主な疾患です。
細菌やウイルス感染
梅雨から夏の時期は気温や湿度が高いため細菌性の下痢が多く、冬は気温が低くて乾燥するためウイルス性の下痢が多いです。感染の可能性がある方は、しっかりと水分を摂取しましょう。自己判断で市販の下痢止めを飲むと、悪化するリスクがあるため控えてください。
また、嘔吐や血便、発熱などがある方は早めにご相談ください。
過敏性腸症候群
激しい腹痛とともに便秘や下痢などの症状が長期間持続する疾患です。便秘型、下痢型、便秘と下痢とが交互に現れる混合型、膨満感などが現れる分類不能型に分類されます。下痢型は特にひどい腹痛と下痢が起こり、普段の生活に支障をきたすため、早期治療が欠かせません。
潰瘍性大腸炎・クローン病
いずれも長期間にわたって下痢が何度も何度も起こる炎症性腸疾患です。原因が明らかになっていないため、完治させる治療法が確立されておらず、難病指定を受けています。昨今は患者数が増えてきており、なかでも若年層の発症が目立っています。
消化器内科では専門的な検査・治療を行えます。治療を行って炎症を制御すれば、以前と同じような生活を送れます。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸粘膜に発生する大半のポリープは腺腫です。腺腫のポリープは良性である一方で、放っておくとゆっくりと大きくなって、いずれはがん化する可能性があります。大腸ポリープや大腸がんは初期には自覚症状が乏しく、気づかないうちに病状が進んでいきますが、サイズが大きくなり便が通りづらくなると下痢が起こることがあります。また、直腸付近に発生した場合、便が直腸粘膜に接触して血便が出る場合もあります。
アレルギー性胃腸炎、乳糖不耐症
アレルギー性胃腸炎では、特定の食品がアレルギーの原因(アレルゲン)となり、嘔吐や下痢などの症状が生じます。また、命に関わるアナフィラキシーショックに繋がる場合があるため、アレルゲンになる食べ物を避ける必要があります。
乳糖不耐症は、乳糖を分解する酵素が十分にないため、膨満感、腹痛、下痢などの症状を示す疾患であり、アレルギーとは異なります。体質が原因になることもある一方で、胃腸炎などから発症する場合もあります。
下痢の検査(大腸カメラ検査)
まずは問診にて、下痢が起きたきっかけや下痢以外の症状の有無、便の臭いや色、形、排便回数などについて詳細にお伺いします。できる限り正確にお伝えください。
その後、急性下痢か慢性下痢か、そして原因となる疾患の有無を確かめるために必要な検査を実施します。
血液検査では、全身状態、感染や炎症の有無などを調べます。大腸カメラ検査では大腸粘膜全域を直接観察して、疑わしい病変や炎症、ポリープなどの有無を確かめます。
当院では熟練の医師が検査を担当し、最先端の内視鏡システムを用いて短時間で精度の高い検査を行います。下痢などでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
下痢の治療
下痢がずっと起きている場合、脱水に最も注意しましょう。吐き気や嘔吐などのせいで水分摂取が十分にできない方は、点滴にて水分を投与する場合もあります。
急性下痢と慢性下痢は別の治療法を行う場合がありますが、下痢を引き起こす疾患があれば、その疾患に対する治療を優先します。食中毒などにより下痢が起きている方は、下痢止めを使うと逆に病原体が排出されずに改善までに時間がかかってしまいます。そのため、勝手に市販薬などを使用することは控え、まずは当院にご相談ください。
急性下痢
はじめに、湯冷ましや白湯、麦茶など暖かいものか常温の飲み物を飲みましょう。経口補水液なども効果がありますが、できるだけ常温の飲料水を飲んでください。嘔吐するなどご自身で水分を飲めない方は、医療機関にて点滴を受けましょう。
食べ物は、できるだけ消化しやすいものを摂取してください。例えば、軟らかくなるまで煮たうどん、白粥、コンソメスープ、薄めの味噌汁、すりおろしたリンゴ、腸内細菌叢を整えるヨーグルトなど乳酸菌が含まれた食品、豆腐などの柔らかい食べ物などが挙げられます。
感染性の下痢の場合には、しっかりと手洗いして専用のタオルなどを使用してください。また、仕事や学校を休まないといけない場合があるため、医師の指示を必ず守って自宅安静を心がけましょう。
慢性下痢
一般的に慢性下痢は、何らかの原因疾患による症状として起こります。原因疾患がある場合は、疾患の治療のために病院を受診することが重要です。
原因疾患がない場合、具体的には、特定の食品を摂取すると下痢が起こる、乳糖不耐で乳製品や牛乳を摂取すると下痢が起こるなどの場合は、それらの食品を避けるようにしましょう。
また、冷たい物は食べ過ぎず、香辛料やカフェインなどの刺激物を避けて、暴飲暴食も控えましょう。消化しやすい食べ物や、白身魚、脂肪があまり含まれていない植物性タンパク質などをバランスよく食べることを意識してください。
下痢の予防
生活習慣の改善
刺激になる香辛料の摂り過ぎを避け、暴飲暴食しないようにするなど食生活を改善しましょう。また、冷えが原因で下痢になりやすい方は、冷房対策や冷たい物を摂取し過ぎないようにしましょう。
ストレス
自律神経が失調して下痢になりやすい方は、十分な休息・睡眠時間を確保し、気分転換になるスポーツや趣味を見つけてストレスを発散するのがお勧めです。また、不安や緊張のせいで長期間にわたって下痢が持続している方は、過敏性腸症候群の可能性があるため、できるだけ早めに消化器内科にご相談ください。
節煙・禁煙
ニコチンによって腸の蠕動運動が活発になります。下痢が持続する方は、タバコの量を控える、あるいは完全に止めましょう。
定期的な検査
(大腸カメラ検査)
大腸ポリープや大腸がんでも下痢になります。大腸ポリープの時点で除去すれば大腸がんの発症を防げます。
また、早い段階で見つけられれば、負荷のかかからない治療で根治が期待できます。大腸がんを早い段階で見つけて診断を確定できるのは大腸カメラ検査だけです。検査中に大腸ポリープを見つけた場合、そのまま除去できます。当院では専門医が最先端のカメラシステムを駆使して、高精度の検査を実施しております。また、ウトウトしたままで受けられる苦痛のないカメラ検査にも対応しております。