健康診断で異常を指摘された方へ
健診の結果を活かしましょう
健診結果は、身体的健康だけでなく、精神的健康を保つためにも大切な情報です。項目ごとに、「異常なし」「要経過観察・要再検査」「要精密検査」「要治療」の4つに分けられます。これらの用語を正しく理解し、健康状態の維持に役立てましょう。
以下のような方は注意が必要です
- 要経過観察」と指摘されたが、定期的に受診していない
- 「要再検査」「要精密検査」、「要治療」と指摘された
- 健康診断の項目で異常値が出た
- 健康診断の結果を把握していない
- 自覚症状がないからと、再検査や精密検査を受けていない
診断結果の見方
異常なし
検査結果の数値は基準値内に収まっており、機能的な問題はありません。
要経過観察・要再検査
検査結果の数値が基準値外となっていますが、早急に治療を行う必要はありません。健康状態を維持するために、食生活など生活習慣を見直して疾患の予防に努めましょう。
当院では、健診結果をもとに生活習慣の改善指導を行っています。お気軽にご相談ください。
要精密検査
検査結果の数値が基準値外となっていますが、原因を突き止めるために精密検査が必要です。そのため、できる限り速やかに医療機関を受診し、精密検査を受けましょう。
ただし、要精密検査だからといって絶対に何らかの疾患が発症しているわけではありません。特に問題がない場合もあるため、過剰に心配しなくても大丈夫です。当院では2次検査や精密検査も行えるため、お気軽にご相談ください。
要治療
速やかに治療を開始しなくてはならない状態です。できる限り早めにご相談ください。
健康診断で指摘されやすい項目・考えられる疾患
健康診断では、血圧や血糖値を含む様々な項目が調べられます。
以下では、特に異常が指摘されやすい項目について説明させて頂きます。
血糖値が高い(HbA1cが高い)
血糖値とは、血中のブドウ糖濃度のことです。
また、HbA1cとは、過去1~2ヶ月間の血糖値の平均を表した値です。血糖値は食事により変動する場合があるため、HbA1cとともに確認することが重要です。
この2つの数値が高いと、糖尿病予備軍や糖尿病の可能性があります。放っておくとほぼ症状がないまま病状が悪化していきます。高血糖状態が持続すると、体内の細い血管がダメージを受けて血流が阻害され、特に細い血管が数多く集まる神経や腎臓、眼の合併症に繋がります。
国内の糖尿病は、90%以上が生活習慣の乱れから発症する2型糖尿病です。
血圧が高い
血圧とは、心臓のポンプ機能により拍出された血流が血管壁を圧迫する力のことです。
健診時に測定した血圧が140/90mmHg以上であれば高血圧症です。
血管が圧力を受け続けると少しずつ損傷し、心臓にも負荷がかかります。動脈硬化の進行を招き、いずれ脳卒中や心筋梗塞に繋がる恐れがあります。
高血圧は病状が進んでもほぼ目立った症状は現れません。健康診断で異常が判明した方は、指示に従って検査や治療を受けましょう。
コレステロール値が高い
中性脂肪(TG)や悪玉(LDL)コレステロールの値が異常に高い、または善玉(HDL)コレステロールの値が異常に低い場合、脂質異常症と診断されます。
正常値は中性脂肪が150mg/dl未満、LDLコレステロールが140mg/dl未満、HDLコレステロール値が40mg/dl以上となります。
脂質異常症は高血圧症や糖尿病と同じく、ほぼ症状が現れず、知らないうちに病状が進んでいきます。脂質が血管の内側に蓄積して動脈硬化を招き、脳卒中や心筋梗塞に繋がる恐れもあります。
尿酸値が高い
尿酸値は血中の尿酸濃度です。尿酸値があまりにも高くなると高尿酸血症を発症します。この状態では症状は現れませんが、放っておくと心筋梗塞などの疾患を発症しやすくなります。また、過剰な尿酸が鋭い結晶となって足の関節などに沈着し、炎症が起こって痛風を発症します。痛風では激しい痛みに襲われます。何度も痛風発作が起きると、発生間隔が少しずつ短くなり、痛みも増強していきます。
肝臓の数値が高い
ALP・ALT(GPT)・AST(GOT)・γGTP・ビリルビンの値が異常に高い、もしくはアルブミンの値が異常に低い場合、肝機能が低下している可能性があります。
原因として、お薬の副作用やウイルス感染、アルコールの過剰摂取などが考えられます。原因を特定するためにも、さらに詳細な血液検査や腹部CT検査、超音波検査などを行います。
膵臓の数値が高い
血液検査でリパーゼやアミラーゼに異常値が出た場合は、膵臓に何かしらの問題が生じている恐れがあります。
リパーゼとアミラーゼはいずれも膵臓から分泌される消化酵素で、十二指腸で脂肪を分解します。膵臓疾患はほぼ症状が現れませんが、放っておくと命に関わるリスクがあります。健康診断で異常値が出た場合、指示に従って検査や治療を受けましょう。
貧血
貧血は鉄分不足が原因となることが多いです。特に女性はよく起こる症状のため放っておかれることが多いですが、体内で出血が起きている可能性もあります。出血を起こす原因疾患には、胃がん、大腸がん、胃・十二指腸潰瘍、子宮筋腫などがあります。
尿検査が陽性(+)・ 血が混じる
尿検査でプラス(+)が出た場合、尿タンパクが陽性で、結石、尿道炎、膀胱炎などの疾患が疑われます。妊娠中の場合、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)も疑われます。
また、尿鮮血陽性と出た場合、尿に血が混入しており、腎臓や尿路に問題が生じていることが考えられ、がんからの出血の可能性もあります。
便潜血検査で陽性(+) 血が混じる
便潜血検査で陽性反応が出た場合、便に血液が混ざっていることを意味し、痔や消化管からの出血などが考えられ、食道がん、胃がん、胃・十二指腸潰瘍、大腸ポリープ、大腸がん、炎症性腸疾患などが原因として考えられます。
陽性反応が出た場合、必ず内視鏡検査を受けましょう。当院では、胃カメラ検査、大腸カメラ検査を行っております。
ピロリ菌が陽性になった
ピロリ菌感染が疑われます。ピロリ菌は胃粘膜に棲みつき、慢性胃炎を起こします。胃炎が長期間にわたって続くと、胃・十二指腸潰瘍や胃がんのリスクが高い萎縮性胃炎に至ります。健康診断のピロリ菌検査は、ピロリ菌抗体価をチェックしており、直接的にピロリ菌感染を確認しているわけではないので、検査の精度はあまり高いものではありません。また、抗体があったとしてもピロリ菌自体が確認されない場合、除菌治療は行えません。ピロリ菌抗体陽性になった場合、消化器内科でピロリ菌感染検査を行い、陽性反応が出た場合は除菌治療を受けることをお勧めします。
胸部レントゲンで異常
胸部レントゲンで異常が見つかった場合、肺、気管、甲状腺、心臓などに異常が発生している可能性があります。結核やCOPD、肺がん、甲状腺がん、心肥大などの重篤な疾患の発見に繋がる場合もあるため、医師の指示通りに検査や治療を受けましょう。
健康診断の再検査を受けないとどうなるの?
健康診断で、「要再検査」など指摘された場合、必ずその指示を守るようにしてください。「要再検査」「要精密検査」と判定された場合も、疾患を発症していないこともありますが、深刻な疾患を早い段階で見つけ、適切な治療を行えることも多いです。そのため、「再検査」「要精密検査」「要治療」などの指示は、必ず守るようにしてください。
企業様に関しては、従業員への安全配慮義務があります。具体的には、健康診断でリスク要因が見つかっていたにもかかわらず、職場環境などの改善を行わずに従業員が病気を発症した場合、従業員自身の判断で再検査や精密検査を行わなかった場合も、安全配慮義務違反となり、損害賠償責任が生じることがあります。